3月14日。公立中学校の卒業式である。
その前日の3月13日。もう一つの卒業式が行われた。
すでに、「みんなと一緒に卒業します。」とカミングアウトはしていたのだが......
3月13日、最後の卒業式練習を終えて職員室へ帰ろうとすると、 「ちょっと待ってください。」と一人の生徒。
「あのステージの×印のところへ立ってください。」と促され、ステージへ。
×印は卒業証書を受け取るためにバミってあるところ。
何かと思っていると、卒業式実行委員の生徒たちがさささっと移動。
司会席から「これから卒業証書授与式を始めます。」と第一声。 続いて開式の言葉。 一人の生徒が前へ出て「これから浦上先生の卒業証書授与式を始めます。」と言った......。
後ろを向いてくださいという声で振り向けば、演台の向こうに一人の生徒。 卒業証書らしきものをもって。
「卒業証書。浦上裕文殿。右のものは34年間の教員生活の課程を終え、新たな夢に向かい歩み出すことをここに証します。......第41期生一同......」 と読み上げてくれた。
何というサプライズ。声を失っていると、サインボールやら学入りの写真やらアルバムを渡された。
「ありがとう。本当にありがとう。」 と何とか言うと歌が始まった。
いきものがたりの「ありがとう」。
忙しい自分たちの卒業式練習の合間を縫って、シークレットで練習してくれたのだろう。みんなの顔を見た。全員が歌っている。
この学年の生徒は本当にグレートな奴らだ。
一緒に卒業できて幸せだ。
3月14日の自分たちの卒業式を完璧に作り上げたのは言うまでもない。
教員をシャットアウトし、シークレットで練習した「卒業生の言葉」と歌。
私たちも当日にならないとどんな風になるのかわからない。 しかし、実行委員を中心に見事に作り上げてくれた。
こんなグレートな学年をどう指導してきたか。 1年の時から、できるものにはやらせてみようと言うことで、 「自主自律」の学年目標の下、様々なことを 自分たちで考え、自分たちで律してやることを徹底してきた。
270名あまりの誰に聞いても学年目標を言うことができるだろう。
3年間一つのことを徹底する力は大きい。